艦内恋愛(アスキラ←シン)
「キラさん!」
一緒に向かい合って食事をしていたはずのこの場で。
急にシンが真剣な表情になって自分の手を取ってきた。
もう食べ終わってるし、別にそれは良いんだけど。
…この鬼気迫る状況は一体何なんだろう……
首を傾げるキラに対し、シンは1つ深呼吸。
そして―――
「貴方が好きです! だから付き合ってください!!」
廊下にも響き渡る音量で大告白を行ったのだった。
――― 一応もう1度言えば、ここは食堂である。
当然他にも人はいる。
不幸にも少年の大告白を聞いてしまった者達はその場で固まってしまっていた。
しかし言った本人はそういうのは気にしていないらしい。
…そして、言われた方も人目は特には気にしていなかったらしく。
驚くには驚いていたが、それも突然告白された方だけで。
「え。無理。」
さらには普通に即答してきた。
「どうしてですか!?」
しかしそこが若さ故なのか シンの勢いも衰えない。
項垂れるどころかさらに身を乗り出してくる。
「シンは好きだけど… 僕にはアスランいるし。」
「じゃあアスランさんと別れて俺と付き合ってください。」
「それも無理。」
これまた即答。
そしてまた シンの方も納得できないらしい。
「何がダメなんですか? 年齢?」
「…一応 僕も好きだからアスランと付き合ってるんだけど……」
ボソリと答えたキラの声には少し呆れも含んでいたかもしれない。
その言葉はシンには入る余地はないと言っているようなもので。
普通はこの辺で諦めるのが妥当だろう。
しかしまだ若い少年は、"諦める"という言葉を知らなかった。
「だったら どうしたらあの人からキラさんを奪えますか!?」
直球で質問ときた。
「奪うって何…」
もうどう言ってやったら良いのかキラにも分からなくなってきている。
けれど 相手は真っ直ぐな目を向けてくるものだから。
「そうだね… アスランに何でも良いから―――そうだ、MS模擬戦に勝ったら考えてみるよ。」
つい助け舟のような言葉をかけてしまった。
まぁよく考えれば無謀な注文なのだが。
しかし その言葉にシンは俄然やる気を見せた。
「忘れないで下さいね。」
キラに一応の釘を刺し、きっちりキラの分のトレイも持って軽い足取りで去っていく。
多分今からシュミレーションでもしに行くんだろうなと、どこか微笑ましい心地でキラはそれを
見送ってやった。
「―――勝てると思ってるのか?」
いつの間に来ていたのか。
背後に立っていたアスランがどことなく不機嫌な声で呟く。
それに、首だけ振り返ってキラは悪戯っぽく笑った。
「負けるの?」
「まさか。」
即座に返ってきた自信満々な返答に肩を竦める。
「だよね。」
2年のブランクがあるとはいえ、今はもうすでに勘も取り戻している状態で。
同じエースパイロットでもあの大戦を最前線で生き抜いたアスランと急に戦場に放り出されたばか
りのシンでは実力の差は歴然としている。
どうやってもシンに不利だ。
「…ああいう反応 可愛くて良いよね。まだ若いよねー 2つしか変わんないけど。」
そんな無茶な条件を出したキラはといえば、優しげに笑ってそんなことを言っている。
キラにとってシンは可愛い弟みたいなもので。
つい甘いことを言ってしまう。
それがアスラン相手のような感情に変われるかというと、そこは疑問だけれど。
「―――渡す気はないからな。」
ぐっとキラを後ろから引き寄せて、耳元で囁かれた声は低く。
シンの告白がよほど気に障ったことが知れる。
「頑張ってね。」
それに慌てるどころかキラはどこか楽しげに笑って あっさり言った。
「他人事か…」
呆れるアスランの言葉も軽く笑って受け流す。
「…何がそんなに楽しいんだ?」
「嫉妬されるのも悪くないなってちょっと思っただけ。」
調子に乗って ついうっかり正直に言ってしまった。
それを聞いて、ほぉ と何か含んだような呟きが落とされる。
不穏な気配を察したキラがびくりとした時にはもうすでに遅かった。
「余裕だな。なら俺が勝ったら何かしてもらおうかな。」
「…… "してもらう"の時点で 大体想像つく自分が嫌だ……」
頭を抱えるキラにアスランは甘いなと言って 首筋にキスを落とす。
そしてキラが悲鳴を上げて反撃してくる前に素早く手を離し。
「楽しみにしてるよ。」
妙に楽しげに微笑んで アスランも食堂から出て行った。
---------------------------------------------------------------------
キラinミネルバ捏造設定。けっこう楽しい。
BACK