朝から
起きなきゃ…
目を開けなくても カーテンの隙間から白い光が差し込んでいるのが分かる。
目覚ましのアラームを止めた手はそこに乗ったまま。
それが さっき鳴ったアラームは夢じゃないという証拠。
嘘だと思いたくても間違いなく起床時間だ。
「…だるい……」
身体はまだ休養を訴えている。
できることならそうしたい。
でも、自分にはやらなければならないことがあるのだ。
「って…」
のそのそと布団から這い出ようとして、身動きが取れずに再び脱力した。
自分の身体を拘束しているものがある。
それは… 強くて優しくて温かい。
「アスラン…」
自分の腰を強く引き寄せているその腕は、同じ歳のはずなのに自分より逞しくて悔しかったり
するけれど。
夜、この中で眠るのは嫌いじゃない。むしろ心地好い。
でも、今 これは"敵"だ。
彼の腕の中から抜け出すのは毎朝一苦労。
その1番の理由は、自分がこの温かさを手離したくないからだけれど。
「アスラン、離してってば。」
巻きついたままの腕を引き剥がそうと掴む。
けれど、
「ぅわっ!?」
逆に腕の中に引き込まれてしまった。
「ちょ、ちょっとアスラン!」
寝惚けているのかもしれないが、その力は予想以上に強い。
顔を彼の広い胸に埋めるような感じになって、息苦しいけれど暴れても効果は哀しいほどに
なかった。
「はーなーしーてーーっ 僕は起きなきゃいけないんだってば!」
おかげで目は覚めたが 変わらず身体に力は入らない。
「アスランっ!」
本気で脛でも蹴ってやろうかと思い始めたところで。
頭上から声を押し殺すような笑い声が聞こえてきた。
「……アスラン……」
緩められた隙間からジト目で見上げると、そこには意地悪げで でも綺麗な笑顔の彼。
何?とでも言いたげな表情で。
瞬間 負けた、と思った。
「おはよう キラ。気分はどう?」
「…誰かさんのおかげで朝っぱらから疲れてるよ。」
盛大な嫌味を込めて言っても、どこ吹く風。
クスクスと大人びた笑みを漏らすだけだ。
「ごめんごめん。やっぱり昨日無理させ過…」
「それ以上言うな!」
最後の言葉は 皆まで言う前に両手で口を塞いで止めさせた。
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ただのバカップルです。
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