銃口


 銃を向けられ、これで最期だと思った。
 でも、他の誰でもない お前の手で逝けるのなら。
 もう1度こうして会えたなら。
 それで良いかもしれないと思った。

 逸らすこともせず真っ直ぐに彼を見る。
 この目に焼き付けておきたい。
 風に靡く艶やかな茶の髪も、大粒のアメジストのような今なお澄んだその瞳も。
 何一つ見落とさないよう。
 死の瞬間までお前を見ていたかった。


 けれど。
 時が止まってしまったかのようにそれ以上動かなくて。
 いつまで経っても終わりはこなかった。


「……どうして泣くんだ?」
 気がつけば彼の頬には止め処なく溢れる涙が伝っていた。
 銃を構えたまま、その先はアスランに向けたまま。

「だって、君が抵抗してくれないから。」
 その銃を僕に向けてくれないから。

「俺はお前を撃てないよ。」

「君が、そんな風に穏やかに笑うから…」

 静かな静かな声。
 震える声を抑えもせずに。


「ねぇ、僕はどうすれば良いの?」

 引き金が引けないんだ。
 ここまで来てしまったのに。まだ。

「僕も君を撃てないよ。だったらどうすれば良いの?」

 分からない。
 分からないよ。

 涙を流しながら、撃つことも降ろすこともできずに。

「ねぇ アスラン。僕はどうすれば良いのかな…?」


 殺すことも死ぬこともできない。

 でも 戻れない。


 どうしてこんなことになってしまったんだろう。

 声に出したのはどっちだっただろうか。


 向けられた銃口に。
 けれど時はまだ動かない。




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たまには暗い話でも(オイ)
そのまま敵対していて白兵戦シチュ。でも死にネタではない。



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