日常会話
「……キラ。」
腰に腕を巻きつけて キラを宙に浮かせたまま彼は見上げる。
やっぱり、とでも言いたげな様子で。
その呆れ混じりの声に、キラは離れようと抵抗していた動きをぴたっと止めた。
「な、何? アスラン…」
これから言われるであろう言葉は大体想像がついている。
だからこのところ――― 今も逃げていたのに。
「…ちゃんと食べてるか?」
「な、なんで?」
無駄な抵抗と知りつつも濁してみる。
「いや 最近抱きご…」
続く言葉はとっさに抑えたキラの手で塞がれた。
聞くんじゃなかった…
顔を赤くしたままでキラは重い溜め息をつく。
ちなみにここは艦の廊下のど真ん中。
今の状態ですらキラは見られたくない。
「……ちょっと細すぎないか?」
塞がれたことはあまり気にせず 腕に回した腕でサイズを測る。
一周しても腕がけっこう余るキラの腰回り。
下手したら女性より細いんじゃないだろうか。
「昔から細いけど これはちょっとな…」
細すぎだろう、と呟いて。
「―――今度からは毎食一緒だな。」
「えっ」
あからさまに嫌そうというか、引いた反応を返してしまって。
ハッと慌てて口を噤むけれど。
「へぇ… そういう反応するんだ?」
「!?」
口元は笑みの形だけど目が据わっている。
ヤバイかもしれない、と本能的にキラは身の危険を感じた。
けれどしっかり捕まえられている身体は身動きすら取れない状態で。
「お仕置きして欲しい?」
……怖い。
ブンブンと必死で首を振るキラにアスランはふーんと返す。
「食べる?」
「食べるから! ちゃんと食べるから!」
だからそれだけは嫌だ、と。
懇願するキラの表情はどこか必死だ。
「そう?」
少し残念そうに答えるとアスランはやっとキラを解放した。
「じゃあ 今からお昼にしようか。」
「……はーい。」
だから逃げてたのに…
「あんまり食べないと口移しで食べさせるよ?」
「た、食べるよ!」
「ホントか?」
あまり信じていなさそうな目でアスランはキラを振り返る。
仲良く手を繋いでフワフワと進む姿は一見幸せそうに見える。
が、実はキラが逃げれないようにというだけのこと。
その証拠にキラはその手を握り返していない。
「ホントに! 好き嫌いも絶対しないから!」
だからそういうことは止めてっ!!
"恥ずかしい"という概念が欠落した恋人に心で涙しながら、キラは引かれるままについて行くこと
にした。
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黒というか暴走というか… アスランが変な人だ…
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