41話より妄想


「アークエンジェルに戻ったら… シャトルを1機、借りられるか?」
 カガリを残して2人、アークエンジェルに戻ろうとしていた時。
 ジャスティスがフリーダムの肩に手を置き―――…
 つまり、アスランが僕を呼んで そう言った。

「アスラン…?」

 どうして、シャトルを?
 よく分からないけれど、漠然とした不安が頭を過ぎる。

「俺は 一度プラントに戻る。」
「え?」

 プラントって…
 急に どうして?

「父と1度、ちゃんと話がしたい。…やっぱり。」
「アスラン、でも…」
 それは…
「分かってる。…でも、俺の父なんだ…っ」

 苦しそうな声。辛そうな表情。
 そう、僕らが今から戦おうとしているのは… アスランのお父さん。
 1番苦しいのは、もちろんアスランだよね。

「―――分かった。」
 精一杯の笑顔で、僕はスクリーンのアスランを見た。
 驚いたようにして、彼は僕を見てる。
「マリューさん達に話すよ。」

「…すまない。」

 そんな風に言わないでよ。
 今、1番大変なのはアスランだから。
 僕はもう吹っ切っているけど。
 アスランはまだ、そうはいかないよね。

 …だから。
 今 1番言いたいことは言わない。
 君を困らせたくないから。


 ……本当は "行って欲しくない"、なんて。

 僕に、そんな権利はないから。

 せっかく一緒に居られるのに。
 君と戦わず、やっと同じ時を、同じ空を共有できるのに。
 また 離れなきゃならないなんて。

 でも、それは僕のワガママ。

 唐突に信じられない現実を知らされたからかもしれないけど。
 この、不安定で揺らぐ気持ちは。
 だから こんなに弱気なのかもしれないけど。
 でも、だからって君に甘えるわけにはいかない。

 だって 相手はお父さんなんだもの。
 アスランは決めなくちゃいけない。
 自分で決めなきゃいけないんだ。

 不安だけど。
 また君が遠くに行ってしまわないか、とても不安だけど。
 だけど。
 君を止める権利は、僕にはないから。

 君の思う通りにして。

 …だけど。
 絶対に戻ってきて。

 僕はもう君と離れたくない。
 胸が張り裂けそうなほど、辛い夜を過ごすのは嫌なんだ。

 そんなこと、困らせるだけだから… 言えないけど。

 アスランは道を探してる。
 だから 僕は何も言わないけど。

 でも、僕は…
 今度こそ君と離れないと誓ったから。

 だから、お願い…



 それは声に出さない想い。
 笑顔に隠した本当の気持ち。







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