幻想(ゆめ)のその後(アスラン&キラ&メイリン)
「聞いてた?」
執務室のドアを閉めたキラは、すぐ脇の壁に凭れている親友に声をかける。
…キラが中に入る時からずっとそこにいた彼に。
「……」
黙って視線だけを向けられるが、その表情が何を言いたいのか全て教えてくれていた。
他の人が分からないのが不思議なくらい、彼は表情豊かな人だと思う。
「良かったね。後は君次第だよ。」
そんなアスランにキラはにっこりと微笑む。―――最後、彼の背中を押すために。
「…後は頼めるか?」
場所を譲って扉の前から離れ、入れ替わりにそこに立った彼からの一言。
それに もちろん、と、言葉要らずに了承すれば、彼の姿は扉の向こうに消えた。
2人のやり取りを見ていた人影には気づいていた。
アスランが中へと消えるのと同時にその少女は現れる。
紅い髪をツインテールにした 可愛らしい少女。
ザフトを脱走したアスランと共にやって来た彼女―――メイリン・ホーク。
彼女もまたアスランを想う者。けれど。
目の前までやってきた彼女を阻むように キラはすっと手でその先の道を遮る。
「アスランは今から重大な決断をしに行くんだ。だから邪魔しないであげて。」
ごめんね、と。
穏やかな笑顔で謝れば、彼女は意外にも小さく微笑んだ。
「―――やっと決心されたんですね。」
怒りでもなければ それは諦めでもなく。
それはとうに悟っていたのだという顔で。
「君はそれで良いんだ?」
そう尋ねてみれば、彼女からは肯定の意味で笑みを返される。
「もう少し時間があれば、可能性はあったかもって…思ったりもするんですけど。仕方ない
です。だってアスランさんってホントに一途なんですから。」
よくアスランを見ているなと思った。そして引き際を知っている。
彼女は見た目からは想像できない大人びた思考の持ち主だった。
カガリがアスランを任せたのも分かる。
「いい子だね、メイリンは。」
「ふふ。キラさんは優しくない人ですよ。」
「…初めてもらった評価だ。」
優しすぎるとかお人好しとかは散々言われたことがあるけど。
ついでに言うと笑顔で言われることでもないと思う。
「だってキラさんの一番はカガリ様でしょう? あの方だけではないですけど、"大切な人"
以外には厳しいです。」
…本当によく見てる子だ。これだから女の子は侮れない。
やっぱり勝てない と、キラはあっさりと負けを認めた。
「君にはきっとアスランなんかよりいい出会いがあると思うよ…」
「ありがとうございます。そのつもりです。」
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キラはきっと2人がくっついたのを確認してプラントに行ったと思われます。
そしてメイリンちゃんが精神的に強すぎですね(笑)
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