幻想(ゆめ)(キラカガ双子?)
「キラ。」
執務室に現れた彼の姿を認めた瞬間にパッと華やいだ表情は、次に彼から発せられた「カ
ガリ様」という声に再び沈む。
今は仕事だからということは彼が身に纏う軍服からも分かることだったけれど、キラだけ
は何があっても変わらずにいてくれることを期待していただけに寂しさは増した。
軍の書類を受け取り、2、3の意見を交わして。
それでキラの仕事は終わりだったのだが、彼が何かを言う前に傍に立っていたカガリの秘
書官がにこりと笑って進み出た。
「―――キラ様、少しの間カガリ様をお任せしてもよろしいですか?」
「リリア…?」
カガリが不思議そうに聞くが、若く優秀な女性秘書官の視線はキラに向いたまま。
「すぐに行かなければならない所がありまして。本当はキサカ様がいらっしゃってからお願
いしようとしていたのですけれど… キラ様になら安心して任せられますし。」
「良いよ。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げて 彼女は部屋を退出する。
―――そして、不自然に少しだけ開いたドアの理由を彼女が知ったのはその時。
そして彼女も何も言わずただ微笑んで、少しだけ開たまま その場を去った。
2人きりで残された執務室。
気まずい雰囲気はほんの少しで、キラはすぐにいつものキラに戻ってくれた。
「―――疲れてる?」
額にかかる前髪を優しく掻き上げられる。
そんな心配されるような顔をしていたのだろうか。
本気の心配を擽ったく感じながら 心配するなとくすりと笑った。
「私は平気だ。ちゃんと寝てるし、今はやり甲斐があって楽しいもんだぞ。」
周りの意見に流され、目まぐるしく変化していく情勢に翻弄されていた頃とは違う。
信頼できる者達がいて、たくさんの人に支えられて。
もちろん疲れはするけど、それは苦痛じゃない。
「でもカガリ… 君、誰かに全部言えてる?」
それだけでキラが言いたいことは分かった。
実質 カガリは今1人で政務に携わっている。あの頃はずっと隣にいた"彼"が今はいないか
ら。
相談はできても、弱音を言える相手はいないのではないか と。
「……大丈夫。キラがいる。」
ギュッと抱きつく。
そして抵抗せずに返してくれる彼に 甘えるように頬をすり寄せた。
「だから私は一人じゃない。」
でも、一つだけ我が儘を聞いてくれるなら。
「―――たまにで良い。こうして抱きしめて、名前を呼んで欲しい。…こんなこと、あいつ
には頼めないから。」
「……カガリ、」
『カガリ』
彼に呼ばれる 愚かな幻想(ゆめ)を見た。
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私設ファンクラブ『ラブツインズ』会員番号1番。
気持ちはアスカガなんですが、見た感じはキラカガ双子ですね…
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