誤送信


 自室のベッドに腰かけ、カガリは携帯を見つめて重い溜め息をつく。
 溜め息の原因はただひとつ、自分の恋人―――アスランのことだった。


 何でもできて 頼りになって、そしてとても優しい人。
 不満なんてないはずなんだけど。
 …アイツは元々あまり話さないから、だから考えていることが分からなくて。
 アスランに対する"不安"がカガリにはあった。


『アスランは私のことをどう思ってるんだろ…』
 ぽちぽちと緩慢な動作で携帯に打ち込んで、もう一度溜め息を零す。

 アスランは自分のどこを気に入って好きだと言ったのだろう。
 どう見たってラクスの方が可愛いし アスランにはお似合いだと思うのに。
 昔から男のキラの方が可憐だと言われるほど 男らしかった自分、雑で可愛げがなくて… 
 挙げていたらキリがない。
 …それに、アスランは優しくはしてくれるけどあれ以来好きだとは言ってなくて。
 こんなときはラクスに相談してスッキリしようと、ボーっとした頭のまま送信ボタンを押
 した。

「…あ……」
 その直後にハッと気づく。相手がラクスではなかったのだ。
 しかも、その送信先はよりにもよってアスラン本人。
 キャンセルも間に合わず、画面には送信完了の文字が映し出された。

「ちょ、ちょっと待てー!!」
 ぎゃーっと叫んで 慌てて電話をかける為に電話帳を検索する。
 あんな恥ずかしいメールを見られたら最後。恥ずかしくて死ぬ、絶対死ぬ。
 コール音が耳に届くたび、早く出てくれと気は焦っていった。




「…ん?」
 机の上に放っていた携帯がメールの着信を知らせている。
 差出人は可愛い恋人、もちろん即座に内容を確認して、
「…え……」
 簡素な内容に一瞬固まった。
 そして 我に返ったのはその携帯からの着信音のせい。相手は今メールをくれた彼女だ。

「―――カガリ?」
 <アスラン!! メール見たか!? まだ見てないよな!?>
 アスランが出た 開口一番、すごい剣幕で彼女がまくしたててきた。
 <それ間違いだから! 開けずに今すぐ捨ててくれ!!>
 なんだかとても必死な様子の彼女の声に、アスランは思わず笑ってしまった。

 ―――俺が彼女をどう思っているか、なんて。

 こんな可愛い悩みを 彼女は抱えていたのか。
 気づかずにいた自分が少し情けないけれど。
 彼女の本音を思いがけず聞けたことが嬉しくて。


「―――好きだよ、カガリ。」
 <…へ??>
 カガリには見えないだろうけれど、砂糖菓子のように甘い笑みを浮かべてアスランは愛の
 言葉を告げた。
「不安にさせてすまない。でも俺はカガリを誰よりも大切に想ってる。」
 普段は口にすることのない甘い言葉。
 でも今は彼女しか聞いていないし 恥ずかしくも感じない。
 <…っ!?>
 それでメールを読まれていたことに気づいたのか、向こうでカガリが息を詰まらせた気配
 がした。

「これで安心したか?」
 <っこの バカやろ――!!>
 きっと顔を真っ赤にしているであろう電話の向こうの愛しい少女に、アスランはもう一度
 優しく微笑んだ。







---------------------------------------------------------------------


別にアスカガではなくアスキラでも良かったのですが。
KINGDOMネタが続いていたのでその流れで。



BACK