48話 +キラver.


 どうしようかな…

 見てはいけない場面に遭遇してしまったキラは、とりあえず気づかれないようにこそっと腰を下ろ
 した。
 ラクスと別れて突き当たりを曲がろうとした時。
 それを偶然見てしまった。

 ―――アスランとカガリがキスしてるところ。

 2人はたぶん自分に気づいていない。
 戻るのもアレだし、でも2人の横を通り過ぎないと格納庫には行けないし。
 せっかくの良いムードを邪魔しちゃ悪いかなぁとも思うし。


 …気づいていたんだ。
 2人が互いに魅かれ合っていたこと。
 話し合いの場にアスランが現れなかった時、カガリが探しにブリッジを出て行った。
 その時に分かっていたんだ。
 アスランを支える役は彼女に移って、カガリを守るのは彼に移ったってこと。
 あの2人ならきっと世界を引っ張っていける。
 僕がいなくても大丈夫だって。



 いつ気づくかなぁとのんびり思いながら見ていたら。
 わりとすぐに気づかれた。

「キ、キラ!?」
 アスランのうろたえた表情が面白い。
 それで カガリの方も僕に気が付いて。
「い、いつからそこにっ!?」
 2人とも顔を真っ赤にして僕を見てる。
 こんな目立つ所でキスなんかしたら誰かに見られるってことくらい分かってたんじゃないのかな。
 それでもカガリの腕を放さないアスランはけっこう独占欲強いと思う。


 手摺りを掴んでひょいっと浮かぶと、わざと何事も無かったかのような表情で2人に近付く。
「大丈夫だよ。キスしてるところなんて見えてないから。」
「って 見てるじゃないか!」
「あはははは。」
 わざと明るく笑ってアスランの肩をポンと叩く。
「邪魔する気は無かったんだけどね。じゃあ僕は先行くね。」
 ギャラリーがいたら恥ずかしがるだろうし。
 だから手を振ってさよならしようとしたんだけど。

「俺も行く。」
 そう言ってあっさり離れてしまうから。
「まだちょっと時間あるよ。カガリとゆっくりしておいでよ。」
 僕にだって邪魔をした罪悪感はある。
 ここにいたのはただ通れなかっただけだから。
「話は帰ってからでもできる。キラとだってそうだ。」
「カガリ。」
 何だか見透かされてるような気がした。
 ―――気のせいなのかもしれないけれど。
「だからまた後で。」
 当たり前のようにそう言って。
 彼女は反対の方へ行ってしまった。



「…死ねないね アスラン。」
 あんな風に言われたら。
 くすくす笑って言うと、アスランは眉を顰める。
「お前だってそうだろう?」
 ひょっとしたらアスランは感づいているのかもしれない。
「―――そうだね。」
 僕にできるのはごまかすこと。


 必ず戻ってくると言えない。

 だって僕は。
 ラクスにも約束できなかったから。


「キラ?」
 黙ってしまった僕に不思議そうな顔をして聞いてくる。
 1度外を見て、呼吸を置いてから、アスランに笑いかけた。
「…早く行こう。僕らが出遅れるわけにはいかない。」



 守ってあげてね。僕の代わりに。
 優しくて強いけど、たまに不安そうにするから。
 男勝りだけど、やっぱり女の子だから。

 もし僕がいなくなったら、彼女は悲しんでくれるだろうから。
 その時は君が支えてあげて。

 本当に大切なんだ。
 世界に1人しかいない、僕の半身だから。







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本編キラにしたつもりが、何かシスコンっぽく…
もしくはアスキラっぽい(汗)



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