41話より妄想


 パイロットスーツから着替えている時。
 キラは彼の胸元辺りで浮いているものに目がいった。

「―――アスラン。それ……」
「ん?」
 キラの視線の先に自分も目を向ける。
 淡いピンク色の、雫を形どった石のペンダント。
 重力が少ないここで、それはフワフワと宙を漂っていた。
「あぁ コレか…」
 呟いて それをぎゅっと握り締める。
「カガリが… "守ってもらえ"と言って…」


 あれは偶然の再会。
 ニコルを殺されて自棄になって、怒りに任せてキラを殺そうとした。
 1番辛い時期だった、彼女と再び言葉を交わしあったのは。

 …人前で泣いたのは初めてだった。
 お互いの感情をぶつけ合って、泣くだけ泣いて。
 独りだったら潰れてしまいそうだった。
 けれど彼女が半分請け負ってくれて。
 "キラを殺した"俺を「誰も死んでほしくない」中に入れてくれて。

 彼女との再会は俺にとって救いだった。


「やっぱり。」
 そう言ってキラが微笑う。
「カガリが持ってたのに似てると思ったんだ。」
 最近見ないなと思ってたんだけど。
 人にあげたのなら持ってるはずがないよね。

「―――大切にしてるんだね。」
「えっ?」
 驚くアスランを可笑しそうに笑いつつ見て、キラは石を指差す。
「それ。」
「あ…… ああ。」
 今さら勘違いに気づいて返しても遅い。
 キラはまだ笑っている。

「今からカガリの所に行く?」
 クスクスとした笑いを隠すこともしない。
 きっとからかっているんだろう。
「俺は別に…」
 パタンとロッカーを閉める。
 ほぼ同時にキラも上着を取り出して閉めた。
「ごめん、これはからかって言ってるわけじゃないよ。」
「……?」
「心配じゃないわけないよね?」


 目の前で炎に包まれた彼女の父親。
 自分達を宇宙へと送り出し、散った偉大な人。
 …分かっていて止められなかった彼女の悲しみはどれくらい深いのだろう。


「行ってあげた方が良いと思うんだ…」
「キラ… ―――そうだな…」
 同じ気持ちで2人は小さく頷いた。







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