専有舞姫 1




「……あの、陛下… これって、」

 自分の身を纏うものに躊躇いを覚えながら彼が待つ部屋に入る。
 長椅子に座っていた陛下が、夕鈴の姿を見て待ちわびたように笑んだ。

「よく似合ってる。」
「じゃなくて!」
 顔を真っ赤にして夕鈴は叫ぶ。

「何ですか!? この露出度の高い服!!」


 いつも着ている"妃"の衣装と全く違う感触に、そんなすぐに慣れるはずもない。
 というか、慣れたくもない。

 肩も腕も丸出しだし、髪も一纏めにして結い上げてあるおかげで背中も丸見え。
 布地は薄くて柔らかくて着てるか着てないかよく分かんないくらいだし。
 それに体のラインが丸分かりなのも落ち着かない。


 ―――それもこれも全部陛下の指定だ。
 衣装箱を自ら手に持ってきて、突然着替えろだなんて。

 …中を見たときは絶句した。
 自分1人で着替えると言っておいて良かったと心底思ったけど。



「―――? 舞姫の衣装だが?」
 夕鈴の剣幕に対して、彼は何をそんなに怒ってるのかと言わんばかり。
 そして当たり前のように言われる。

 ……いや、それは私も分かってるし。私が言いたいのはそういうことじゃなくて。

「だから、どーして私がこんなの着なきゃいけないんですか!?」
「何でもすると言ったのは夕鈴だろう。」
 同じ調子で、それも当然といった風に。
 痛いところを突かれた。

「うっ そ、それは…」
 そこを言われると夕鈴も弱くて口篭もってしまう。


(どうしてあんな約束しちゃったのかしら…)
 今更ながらに後悔する。
 限定するなりするかして、もっと言葉を選べば良かった。

 もう本当に今更なんだけれど。



 事の起こりは数日前、陛下を…拒んでしまったときのこと――――












―回想開始―

『こ、今夜はダメですっ』
 寝台の奥に逃げ込んで、ぎゅっと身を固めて彼の手を必死で拒む。
 触れそうになるまで伸ばされた手から逃れて涙目で訴えた。

『…ここまで煽っておいて?』
 寝台の反対側に乗り上げていた彼は不満げな様子でこっちを見つめる。
 その瞳は完全に狼の方。
『あ、煽ってなんかいませんッ』
 怒っているのは分かっているけど、こっちだって事情があるのだ。
 今夜だけは流されるわけにはいかない。
『とにかく今夜はダメなんです! 明日起きあがれないのは困るんですよ!!』

 この人は手加減がない。
 …というか、彼の体力に夕鈴が追いつかない。
 翌日起き上がれないなんてことはよくあって、その理由を誤魔化すのはいつも大変だ。

『―――行かなければ良い。』
『そうはいきません!』

 …絶対それが本音だ。
 瞬時に悟ってさらに身を固めた。


 明日は紅珠に呼ばれて朝から彼女の私邸に行く約束をしていた。
 彼女の友人も数名招かれていて、皆で紅葉を楽しみながらお茶をしましょうと。
 …その友人達の目的は、おそらく様子を見に来るだろう水月さんらしいんだけれど。
 だから安心して良いと紅珠は言っていた。
 ―――彼女は泰家との件をまだ気にしているみたいだったから、行かないと言うと心配を
 かけそうで断れなかった。


『じゃ、1回だけ。』
『ッそれは絶対嘘です!』
 譲歩案は即刻却下する。

『信用ないな。』
『どの口が言いますか!?』
 心外だとでも言いそうな態度に、自分の胸に手を当てて考えろと噛みついた。
『今までそれで済んだことないでしょう!?』


 たとえ1回でも許せば限界まで啼かされる。
 それは経験済みだ。ええもう、何度後悔したか。
 しかも今夜は確信犯。
 行かせたくないと言うこの人が、今回だけなんて絶対有り得ない。


『―――本当に君は強情だな。』
 頑なな夕鈴に、陛下が溜め息をついた―――後に、悠然と微笑む。
『まあ、それを手懐けるのも楽しそうだが。』
『ッ!?』

(まずい、何かのスイッチ入れた!?)
 一気に詰め寄った陛下に手首を掴まれて、強引に胸元から引き剥がされる。
 これで押し倒されてしまえば終わりだ。
 力では絶対に敵わない。



『〜〜〜何でも一つだけ、お願いを聞きますから!』

 実力行使に出ようとした彼に、咄嗟に言ってしまったあれがいけなかった。

『…へぇ。何でも?』
『な、何でもですっ!』

 でもあの時は、その夜を乗り切ればと思っていたから。
 後先考えずに発言してしまっていた。

『…分かった。今日は私が引こう。』
 その言葉を聞いてあからさまにホッとする。


 それがさらに彼の機嫌を損なわせたのにも気づけなかった。


『その代わり――― さっきの言葉、忘れるな。』
『は、はい!!』


 だから、その時彼が何を考えていたかなんて、夕鈴に分かるはずもなかった。

―回想終了―












 ―――そんなわけで数日後、彼が夕鈴に要求した"お願い"がこれだったわけで。


(い、居心地が悪い…)
 絡みつくような視線が居たたまれなくて逸らす。

 見られた場所から熱が上がっていくような…
 触れられてもいないのに抱かれているような、そんな変な気分になってしまって。

(って、何考えてんのよ 私…!)


「夕鈴。」
「はいっ!?」
 身体の芯が疼くような感覚を断ち切って、夕鈴は慌てて顔を上げる。
 …そこにあった艶と色気を倍増ししたような微笑に今度は心臓が跳ねたけれど。

「もっとこちらへ。」
 ふらふらと誘われて、伸ばされた手に自分のそれを乗せる。
 すかさず絡められた指を引かれて指先に口付けられる。
 それに赤面しているうちにさらに強めに引かれ、片膝を長椅子に乗り上げるような変な姿
 勢になってしまった。

「何するんで―――…ッ」
 抗議の声を上げても彼は艶然と笑むだけ。
 けれどそれだけで夕鈴の言葉は封じられる。

(だからどうして無駄に色気が…!)


「―――それで今宵は私のために舞ってもらおうか。」
「…私、踊れませんが。」
 馬鹿にしてるんですかと憮然として言うと陛下が嗤う。
 絡んだ指が離れて腰へと回された。


「君はただ、私に身を任せていれば良い。」





 ※続きの見方は下部に記載。



2011.12.4. UP



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ドSエロ大魔王再臨。懲りずにすみません。

今回は、いつもお世話になっている聖様へのお礼リクです☆
いつもメールで楽しい会話をさせていただいてますv(上記の陛下の称号もw)
そこから派生した舞姫夕鈴がそのままリクエストになりました〜

…うん、着替えろが気がエロに最初変換された時はどうしようかと思った(笑)
しばらく悶絶してました。いや、この話書きながらずっと悶絶してるけど。
陛下のセクハラ度が…誰かこの人止めて〜!!(止まるのはお前だ落ち着け)


<<2の閲覧方法>>
えーと、まず注意なんですが。
18歳未満の方(高校卒業年齢に達していない方)は18を超える年齢までお待ちくださいね。
さすがにこれを「生徒」と呼ばれる年齢の方には見せるわけには……(汗)

いいえ、18歳越えてるわ!というお姉様方は―――
下記の簡単な計算問題にお答えいただいた後、アドレスバー(携帯ならダイレクト入力)に直接書くなり
コピペするなりして飛んでください☆

【専有舞姫2】
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  ※△…マイラブ兄貴こと、几鍔の初登場巻数
  ※▲▲…と、話数v
  ※てゆーかこんなところで使ってごめんよ兄貴……

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